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8・20両国のメインをより楽しむためのパーソナルリポート【今一番の楽しみは「血管」という男。竹下幸之介、22歳の“正直な日常”】

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3月のさいたまスーパーアリーナを前に取材したさい、竹下幸之介は「今年は減量をするんで、唯一の楽しみだったお酒と食事さえも断とうと思っています」と、肉体改造へ着手することを口にしていた。じっさいKO-D無差別級王者に返り咲いた以後は、後楽園ホールのリングへ上がるたびに体型が変わっていた。

絞っただけでなく、明らかに筋肉の量が増えており『北斗の拳』を描く原哲夫先生の画がそのまま飛び出てきたかのよう。さぞや厳しい食事制限をしているのだろうと思い聞いてみたのだが、じつはまったく違う方法で磨きをかけていた。

「それがですね、トレーニング方法も変えてないし、食事も特別に制限していないんです。酒は確かに一滴も飲んでいないですけど、体作りのためにアレを食べない、コレを食べないっていうのは結局しないままで。今までも揚げ物とかラーメンを特に食べていたわけではなかったから、急に食べるものを変えたり抑えたりする必要がなかった。じゃあ、どうやっているのかというと…単純に消費カロリーを増やす。いっぱい歩いたりトレーニング時間を増やしたりで、とにかくカロリーを消費させる方法です。何を食べてもそれ以上に消費すればいいんですよ」

まったくもって根本的な理屈に基づいて、竹下は今の肉体を作りあげたのだ。もちろん本人は「食べた分消費すればいい」と言うが、並大抵の運動量でそうはならない。

現在、竹下は4ヵ所のジムを掛け持ちしている。「ゴールドジム」はマストとして、そこにパワーリフティングのジムである「TXP」(TEAM X’TREME POWER)が加わり、日体大のバーベルクラブも利用。深夜にトレーニングがしたくなったら24時間営業の「エニタイムフィットネス」へと向かう。

朝昼晩の飯のごとく一日3度はジムにいって膨大な運動をしているため、基礎代謝だけで一般成人男性の1.6倍ぐらいあり、ジッとしていても2300~2500kcalを消費するらしい。もっとも重かった時は104kgあった体重が、食べたいものを食べていても現時点で20kg落とせた。

そこまでして竹下が減量に取り組んでいるのは、リング上の動きにおけるメリットとともに、ボディビルへのチャレンジという目標を持ったことが大きい。大学でバーベルクラブを起ちあげ、その筋で高名なバズーカ岡田先生(同大准教授)指導のもと、10月に東京・小松川ホールにて開催される関東学生ボディビル選手権大会を目指している。

「筋肉をデカくするのって限界があるんで、絞っては増やし絞っては増やしを繰り返して筋密度を上げていくしかないんです。それで今は絞っているんですけど、結果的にプロレスをやる上でのメリットも出てくる。今、体が軽くてすごいラクです。それでもていねいに体重を落としていっているんで、筋量も落ちていない。ということは、パワーはそのままで体重だけ軽くなっている。そのおかげで(7月の後楽園で)一日2試合を乗り越えられたというのもありましたね。

ボディビルとプロレスって似ている部分があって、試合で当日頑張るのは当たり前で、そこまでの過程がすべてを決めるじゃないですか。その日一日のために364日を懸けている。そこがカッコいいと思ったんです。ボディビルダーの筋肉は使えないってよく言いますけど、その人たちは使うために鍛えているわけじゃない。ボディビルで使える筋肉を鍛えているのであって、野球選手がサッカーで使う筋肉を鍛えているわけではないのと同じですよ。僕はプロレスで使う筋肉とボディビルで使う筋肉は近いと思っているし、それもただデカくするんじゃなくてパワーをつけるトレーニングを入れているんで、プロレスでもちゃんと生かされています」

ボディビルダーの筋肉は硬くてプロレスには向いていない――それがただの先入観であることを、竹下はリング上のファイトで証明しているのだ。食事や睡眠も体作りの一環とするならば、一日のほとんどがプロレスかトレーニングに直結するもので占められている22歳の日常の中、今一番の楽しみは「血管」なのだという。

「今まで見えてなかった血管が浮いてくるんです。最初は腕が出やすくて、だんだん胸が出てきて背中が出てきて、今は腹筋の血管が走っている。最終段階は脚。血管、楽しいなー。俺の体のこんなところに血管が出るんやって、楽しくて仕方がない。もともと薄かった女性に対する興味がよりなくなりましたね。グラビアアイドルを見るのは好きなんですよ。ただ、それも体のラインに目がいくという。この人は背中が広いから広背筋が発達しているとか。最近はそれさえも薄れてきて自分の血管にしか興味がいかなくなりました。もうヤバいです。一日の会話がコンビニの店員と上野(勇希)クンとしかない。話すことがなさすぎなんです。僕の話題は筋肉か漫画かゲームしかない。プロレスラー同士はだいたい筋肉の話題だけで話がまわるし、日体大の学内も筋肉の話だけで成り立ちます。それだけ自分の好きなものが充実しているんで、苦じゃないんですよね。やらない方が苦ですよ」

食事も、そして異性についてもことさら自身を禁欲的に仕向けているのではなく、自分の中で優先順位をつけるとプロレス、筋肉、漫画、ゲームが不動の上位4位であり、そのあとにようやく食事(おいしいものを食べたいという欲求の意味で)となる。竹下いわく、ここに女性への興味が食い込むのは難しいと言わざるを得ないらしい。

他者から見ると常人とは思えぬ生活であっても、自分が好きなものへ正直に向き合った形だからストレスなくやれる。8・20両国のメインに立つ男は、そんな日々を送っているからこそ、相手の遠藤哲哉へこんな観点からも対抗心を燃やすのだ。

「遠藤さんも自分の筋肉大好きでしょう。根は真面目なのが体に出ちゃっている。だから両国は筋量でも負けたくないですね。そこからボディビルも始まっていると思って、絞りでもデカさでも負けないように持っていきます。せっかくお金を払ってきていただくのであれば、お客さんにはそこも見てほしいです」

取材・文◎鈴木健.txt
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竹下インタビューは8・20両国国技館大会で発売される大会記念パンフレットに掲載!