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【新作オフィシャルパンフレットインタビューEXTRA】検証・今の竹下幸之介に足りないものはあるのか

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リング上だけでなく日々の生活の中でやるべきことをしっかりとやり、それが伝わる肉体をまとって年間最大のビッグマッチのトリを務めたじつに非の打ちどころがないメインイベンター――それが8・20両国国技館を見終えたあとの竹下幸之介に対する、正直な感想だった。

「もうほかの人間は追いつくのを諦めているというか」

戦前、気持ちが伝わってこないと言っていた挑戦者・遠藤哲哉の言葉の中で、一番響いたのは大会オープニングVの中で聞かれたそのひとことだったという。リング上では自分以外のすべてが倒すべき対象となるプロレスラーではあるが、では日々のトレーニングから竹下の上をいってやろうと思って実践している人間はどれほどいるか。

そうした思いが、奇しくも対戦相手の方から出た。もちろんプロレスは練習量だけが勝負を決するものではない。だからこそDDTのファンの間でも、今の竹下には参も否もある。

ただこうなると、逆に「現在の竹下幸之介に足りないものはあるのか」という素朴な疑問が頭をもたげてくる。フィジカル面で何もかもを備えていると思われる絶対王者自身がどう考えているか、両国の振り返り取材の中で聞いてみた。

――今の竹下幸之介に足りないものってあると思いますか。
竹下 自分の力で築くものに関しては、すべて手に入れたと思います。ただ、自分ではないところで築かれるものってあるじゃないですか。それがなんなのかは、僕の方からはわからないんで。でも、きっとあるんですよね。
――たとえば“華”のようなものですか。
竹下 華があるかどうかっていうのは…僕は歴史によるところが大きいんだと思います。たとえば、大家健が一大ブレイクして地上波に出まくるようになるとするじゃないですか。そうなったら、やっていることは急激に変わっていないのに華が感じられるようになるんだと思います。大家さんは泥臭さくて、華とは真逆の魅力を持つプロレスラーであり、そこが支持されているのに、そういうシチュエーションが大家さんを華のあるプロレスラーに変えてしまう。だから、僕が華をまとうとしたらそうなるまでの経験値が必要だし、さらにいうと自分で出そうと思うのではなく、受け取る側がそれを感じ取るかどうかでしょうね。
――華のあるプロレスラーになりたいとは思いますか。
竹下 今の段階では、あまりそこへのこだわりはないですね。ゆくゆくは、そういうものが必要になる時期が来るかもしれないですけど、それを自分の方から早急に求めるのは違う気がするんです。両国で黒潮“イケメン”二郎選手が出たじゃないですか。あれを見ていて僕も面白いと思ったし、すごく華があると思いました。ただ、イケメン選手はあれを意図的にやって見せている。僕は逆に、そういうのをしないというこだわりでやっているんで。プロレスファンの竹下さんからすれば、プロレスラーの竹下幸之介にはそういう方向でやってほしいとは思わないです。
――あれほど日々の中でやるべきことをやって、両国でも王者らしい強さを体現しても、万人がいい評価をしてくれるわけではない。賛否両論の“否”を“賛”に変えるべく、そこで求められたことをやろうという考えはないんですか。
竹下 “アンチがいなければスーパースターになれない”が、僕の持論なんです。前にどこかで言ったと思うんですけど、オセロでなるべく相手に取らせて、最後に角を取って全部ひっくり返して勝つ…これが僕の姿勢です。それほど自分のやっていることに間違っていないって自信を持っているんで、否は否のままでいいと思います。ただし、最終的には黒という見方を白にひっくり返す。突き詰めていけば、支持されるんです。
――「自分は支持されにくいプロレスラー」と以前に言っていましたが、そこに劣等感を覚えることはないんですね。
竹下 僕は劣等感というのがどういうものなのか、味わったことがないんでわからない。支持されるかどうかについても、極論でいったら他団体が乗り込んできてDDTの選手がやられまくってピンチに陥った時、ヒーローショーのように僕がバッタバッタと倒せば支持がハネあがるでしょう。僕がプロレスファンだった時がそうでしたから。ニーズに合わせてやれば賛になるわけで、ある意味それって簡単なんです。でも、試合を見終えて帰りに仲間と居酒屋に寄ってあれやこれや語るとしたら、その場にいるみんながよかったという試合よりも、賛否が分かれた方が討論会のようになって熱くなる。僕は、そういうプロレスをしたいんです。

巷にあふれる商品も、表現ジャンルもその価値は作り手ではなく受け手が決める。プロレス、映画、文章、コンビニに陳列されているパンひとつをとっても、どんなに苦労を重ねた上で世に出しても見たい(食べたい)と思われなければ、あるいは見てよかった(おいしかった)と評価されなければ自己満足に終わってしまう。

ただし、その一方では信念なくして支持もされない。特にこの世界は表現者それぞれの姿勢も見られている。もしも竹下が求められるがまま流されるような若者だったら「今のDDTはDDTらしくない」との声が届いた時点で、昔ながらの団体のカラーを追求しただろう。

「でもそれじゃ、先輩たちがやってきたことをマネしているだけですから。あの頃のDDTが好きでこの世界に入ってきた自分は、それとは違うピラミッドをこれまであったピラミッドの隣に築きたいんです」

ここまでDDTが好きで、自分の考えをしっかり持っていて、さらにはプロとしてやるべきことを24時間やっている人間がトップに存在するのは、それを倒すべき選手たちにとっても、そして団体を愛するファンにとっても恵まれていることのだと思う。オセロの黒を白にひっくり返す孤独な作業を、竹下はこれからも続けていく。

その中でまばゆいほどの華をまとう日が来るかどうか――はじめからあるものより、なかったものを得る過程を追いかけ続けた方が見る側としては面白い。(鈴木健.txt)

※竹下幸之介インタビュー本編は9・2春日部大会より販売される新作パンフレットに掲載されます。お楽しみに!